子宮内膜症
出産年齢の高齢化にともない罹患する可能性が大きくなります
現在、約200万人以上が子宮内膜症に罹患しているといわれています。内膜症という名前のため、子宮内膜の病気だから子宮の病気と勘違いされている方も多いと思います。
子宮内膜は受精卵が子宮に着床するためになくてはならないものですが、着床が無い場合は月経血に変化して排泄され、次の月経周期には新しい内膜組織が子宮に形成されます。月経血が何らかの原因で卵管を逆流するような形で腹腔内に流れてしまうとか、子宮内膜の微量な組織が血管に入り込むことで、からだのあちらこちらに癒着して、毎月月経とともに子宮以外の場所で出血をくり返すことを子宮内膜症といいます。
卵管に癒着して毎月出血をくりかえすと卵管閉塞の原因になりますし、卵巣では卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫)となります。なかには肺や食道などに癒着して、毎月月経とともに出血することで咽喉から血が出たり、肺に血腫ができることもあります。月経とともに悪化する病気ですので、治療は月経を止めることになります。月経が重なると卵巣内に血液が溜まり、だんだん大きくなっていきます。あまり大きくなると卵管を支えている「茎」が捻転を起こす可能性が大きくなります。
茎捻転は内部を通っている血管もねじれますので、卵巣に血液がいかなくなってしまいますし、失神するほどの痛みが生じます。茎捻転を起してしまうと、手術で卵巣も摘出しなければなりません。治療法は妊娠を希望しない場合は、月経を止めるピルを服用します。月経を止めることにより卵巣の大きさも小さくなっていきます。妊娠を望む場合は排卵を止めることはできないので、血腫が大きい場合は血液を抜き取り、卵巣を小さくする手術をします。内膜症は慢性の炎症状態になっているので、卵巣が影響を受けるばかりでなく、卵巣内での卵の発育や排卵にも影響があり、妊娠率の低下につながります。
現在は独身の女性が増えていますし晩婚化も進んでいますから、出産年齢も上がりますので子宮内膜症になる確率も増えます。100年くらい前の時代は、女性は20才くらいから40才まで出産する人も多く、20年間の間に7人とか多いひとでは10人以上の子供を産んだ時代がありました。
大まかに計算すると、子供をひとり産むと月経は少なくても14カ月くらいは停止したことになりますから10人産むと140ヵ月、何と20才~40才までの20年間で10年以上も月経が停止することになります。こういった条件下では子宮内膜症になる可能性はぐっと低くなります。子宮内膜症に罹患する人が最近多いといわれますが、月経回数が多いのですから当然のこととの認識が必要です。
妊娠を望まない間はピルをのんで月経を止めたら内膜症になることは無くなりますから、予防としてこういった方法も近い将来に普通に行われるかもしれません。しかし長期間に渡るホルモン剤の服用に不安を持つ人もいますし、ホルモン剤がからだに合わないこともあります。月経血が子宮内から速やかに排泄されることが子宮内膜症の予防になりますから、子宮内膜が血液に変化する過程において、酵素が働きやすい質の良い内膜をつくるよう、「活血、補血」の作用を持つ漢方薬を服用し、月経時には速やかに月経血が排泄されるよう、上手に漢方薬をのんでみましょう。タンポンの使用についてはなるべく控えたほうが予防になります。
子宮内膜症の症例.1
30才で結婚。31才から不妊治療を始めていらっしゃいます。子宮内膜症は指摘されていたので、早く妊娠すれば内膜症の治療にもなるということで努力してきましたが、33才の時に卵巣が7cmになりチョコレート嚢腫のバキューム手術を受けました。月経痛、腹痛がひどく鎮痛剤が離せない状況です。
筋腫もあったので開腹手術を受けていらっしゃいます。筋腫は全部で4個摘出されて血腫はバキューム方法で処置されています。人工授精は数えきれないほど受けました。そろそろ体外受精を考えていらっしゃいますが、根本的にからだを作り体力もつけて治療に臨みたいということです。
幸いに卵管造影検査は異常がないので卵巣や腹腔内の炎症にたいする漢方薬や卵の質を改善することを目標に、まず血行を改善し月経血の速やかな排泄と止血を目標にしました。服用を始めてからダラダラと続くような月経は改善されて6日間で終わる様になりました。月経痛もなくなり体調が良くなったところ自然妊娠されました。
子宮内膜症の症例.2
5年前に左卵巣皮様嚢胞種で開腹、部分摘出手術を受けられました。1年前、右卵巣茎捻転で卵管壊死、卵管と卵巣を摘出。定期検診で左卵巣が子宮内膜症で3cmになり、再発が恐いとご相談にみえました。
結婚していらっしゃるので、ピルによる治療はしていません。卵巣機能も良くないのですが積極的な治療はせず、妊娠は自然に任せようとご夫婦で決めていらっしゃいます。このまま再度卵巣が大きくなり、茎捻転や手術をすることにならないよう予防を希望されています。
これ以上、卵巣が大きくならないように「活血」を中心にしました。服用を始めてから、月経前の腰痛も軽くなり排卵期の腹痛はなくなりました。半年後の検診で卵巣が小さくなっていると診断されて精神的にとても楽になられたようです。なかなか妊娠されませんが、ご夫婦で旅行されたり、趣味を楽しまれていらっしゃいます。